Musik 2019 Nr. 8

 

 

 


Ludwig van Beethoven

 

 


Symphonie Nr. 8 in F-dur, op. 93

 


Teil 17

 

 

 

 

 

 

 


»Symphonie Nr. 8 in F-dur, op. 93 Teil 16«
[Archiv / Musik 2019 Nr. 7]
より続く

 

 Ludwig van Beethoven (1770-1827) は子供の頃より 「より良く生きるという事の意味」 や、その時代の 「叡智」 とは何かを把握しようと意識して努めていた。その為に古代ギリシャ時代の哲学を勉強し、Immanuel Kant (1724-1804)、Friedrich Schiller (1759-1805) や Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832) 等の著作を好んで読んでいた。

 特に Goethe に関しては、その詩 „Ich denke dein” による 4手の Klavier の為の Lied と 6 曲の Variationen in D-dur (WoO 74) を 1790 年及び 1791 年からその翌年に掛けて作曲しているのを始めとして、1802 年から翌年に掛けて作曲した „8 Lieder” (op. 52) では、Nr. 4 Maigesang と Nr. 7 Marmotte が Goethe の詩に基づいて、また 1809 年の „6 Lieder” (op. 75) では、Nr. 1 Mignon、Nr. 2 Neue Liebe, neues Leben と Nr. 3 Flohlied の 3 曲、更にその翌 1810 年に書かれた „3 Lieder” (op. 83) では、Nr. 1 Wonne der Wehmut、Nr. 2 Sehnsucht、Nr. 3 Mit einem gemalten Band の 3 曲共に、Goethe の詩に基づいて作曲されている。

 これ等の Lieder 等に加えて更に Beethoven は、Wien の宮廷劇場の 1 つであった Burgtheater からの委嘱を受けて、1789 年 1 月 9 日に Mainzに於いて初演されていた、Goethe による悲劇 „Egmont” の為の付随音楽を、1809 年 9 月から翌年に掛けて作曲している。
Ouvertüre 及び 9 曲の、Soprano-Solo を含む Orchester による付随音楽 (op. 84) は、1810 年 6 月 15 日に同劇場に於ける Goethe の „Egmont” の上演の際に初演された。

 かねてより Goethe の讃美者の 1 人であった Beethoven は、Burgtheater より „Egmont” への作曲の委嘱があった際には進んでそれを受け、更にそれに対する報酬の受け取りを辞退している。
作曲に際しては 「Goethe に対する敬愛の念を以てそれを進め」、それと同時に共和主義的自由への闘いを描写した „Egmont” に対して、「この素材に作曲する事は自分を幸せにする」 と、翌 1811 年 2 月 10 日に Bettina von Arnim (1785-1859) に宛てた手紙の中で書いている。

 この付随音楽が初演された翌年の 1811 年 4 月 12 日に、Beethoven は Goethe に宛てた手紙の中で、Leipzig の出版社 Breitkopf & Härtel を通して „Egmont” の総譜の写しを Goethe に送る手配をした事、また 「素晴らしい Egmont」 とこの作品を称賛し、「自分がこの作品を読んだ時と同様に、心からの親しみを以て、あなたを通して考え、感じて作曲をしました」 と伝え、最後に 「閣下の大いなる尊崇者 Ludwig van Beethoven」 と記した上で署名を行っている。
この手紙は Beethoven の友人で、当時その秘書の役目も担っていた Franz Oliva (1786-1848) が、商用で Wien からドイツへ向かう際に託され、同年 5 月 2 日に Weimar の Goethe 宅を訪ねて彼に直接手渡されている。

 その折に丁度 Goethe 宅に、その頃 Goethe と親交のあった Köln 出身の芸術及び建築史家で、同時に美術蒐集家でもあった Sulpiz Boisserée (1783-1854) が訪ねて来て Oliva とも出会っているが、Boisserée と Oliva の両者を Goethe は、それから 2 日後の 5 月 4 日に食事会を兼ねて自宅に招いている。
その際に Oliva は両者の前で Beethoven の作品を Klavier で演奏して聞かせたが、Goethe はその音楽の美しさを認めはしたものの、Beethoven の音楽的及び芸術的価値を認識する事は全く出来なかったという事が、その時の会話を記録した Boisserée の日記より伝えられている。

 

 


Ludwig van Beethoven
による
手紙の原文は省略
日本語訳は執筆者による

 

 


この先は次回
»Symphonie Nr. 8 in F-dur, op. 93 Teil 18«
[Archiv / Musik 2020 Nr. 1]
へ続く

 

 


上部の写真:


Goethe による悲劇 „Egmont”
より
„Egmont と Klärchen”


Goethe 著作集

古典派の画家
Angelika Kauffmann (1741-1807) による
銅版画の為の原画

 

 

 

 

 

 

Bemerkungen sind geschlossen.