Kommentar 2020 Nr. 6
Ludwig van Beethoven
und
seine Zeit
Antonio Salieri
Teil 26
»Antonio Salieri Teil 25«
[Archiv / Kommentar 2020 Nr. 5]
より続く
Wolfgang Amadeus Mozart や
Ludwig van Beethoven が
Wien で活動していた時代の
作曲家で
Wien の宮廷楽長
Antonio Salieri
について
1788 年 2 月に Wien の帝室宮廷楽長に任命された Antonio Salieri (1750-1825) が、先ずは 3 幕の Dramma giocoso „Il talismano” (護符) によって期待以上の成功を収める事が出来たが、それに次いで取り組んだ 2 幕の Dramma eroicomico „Cublai, gran kan de’ Tartari” (Tatar の皇帝 Cublai) は、彼が帝室宮廷楽長に就任したのと奇しくも同時に始まった、Russia 帝国と同盟関係を結んでの、対 Osmân 帝国との戦争という政治的な理由の為に、その演出内容から上演の許可を得る事が出来ず、その後全く忘却の彼方に追いやられる事となってしまう。
それに加えてこの時の戦争による経済的影響の為に、独語劇場よりも比較的費用の掛かった伊語劇場を、この年の公演期間の終了を以て閉鎖する事を皇帝 Joseph II. (1741-1790) が命じていた為に、当劇場の関係者は全員契約解除の危機に晒されていた。
そこで Salieri はこの危機を乗り切る為に、劇場の経営を宮廷から切り離して、予約定期会員の会費とその他の寄付によって運営するという方法を考えた。
この案に基づいて劇場の活動を途絶えさせない為の、Salieri による様々な努力を見た Joseph II. は、伊語劇場解散の決定を思い止まり、更には劇場の活動の存続が、逆に戦争による経済的打撃を幾らかでも和らげる事が出来るかも知れないと迄考えるに至った。
Salieri と、特に Wien の伊語劇場担当の帝室詩人として、同劇場の劇作家を務めていた Lorenzo Da Ponte (1749-1838) は、伊語劇場に対する人々の関心を保持し、劇場の存続を安定させる事に腐心していたが、そういう状況の下で両者によって完成されたのが、4幕の Dramma tragicomico per musica „Il pastor fido” (信頼出来る羊飼い) であった。
Italia の詩人 Giovanni Battista Guarini (1538-1612) の牧歌劇に基づいたこの作品は、1789 年 2 月 11 日に Wien の Burgtheater に於いて初演が行われた。
しかしその後 2 回の公演を重ねたのみでこの作品は、戯曲作法上の不十分さが指摘されて、Burgtheater の演目から外されてしまう。そこで Salieri と Da Ponte はこの作品の改良に取り組み、4 幕であったものが 3 幕に改作されて、新たに同年 10 月 14 日に 3 幕改訂版の初演が同劇場に於いて行われている。
これ等の公演では女性羊飼いの Amarilli の役が、Italia 人の歌手 Adriana Ferrarese del Bene (1759-?) によって歌われている。
London から 1788 年に Wien に移って来た Adriana Ferrarese は、Vicente Martín y Soler (1754-1806) による成功作であった、2 幕の Dramma giocoso „L’arbore di Diana” (Diana の木) の主役を歌って、同年 10 月 13 日に Burgtheater に於いて début していた。
Soprano であった彼女の高音域は非常に高くに迄及んだにも拘らず、その低音も異例に低い音にまで達し、その音域の広さは嘗て Wien では聴かれた事が全く無かったと、当地の新聞によって伝えられている様に、彼女は間も無く Wien に於いて、この時代の最も有名な Soprano 歌手の一人として多大な人気を博する様になった。
Salieri がこの作品に於いて Amarilli の Arie を書く際には、彼女が歌うという事を前提に作曲されており、その完成された曲から彼女の大変優れた歌唱能力を理解する事が出来る。
„Il pastor fido” の改訂版の初演に先立つ、1789 年 8 月 29 日に Burgtheater に於いて行われた、Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791) による 4 幕の Opera buffa „Le nozze di Figaro” (Figaro の結婚) の再演では、Adriana Ferrarese が Susanna の役を歌っているが、彼女の希望に従って Mozart はこの時の再演の為に、第 2 幕第 3 場の Arie „Venite… inginocchiatevi“ (Nr. 13) の代わりに、Ariette „Un moto di gioia“ (KV 579) を、また第 4 幕第 10 場の Arie „Deh vieni non tardar, o gioia bella“ (Nr. 28) の代わりには、Konzertante Arie „Al desio di chi t’adora“ (KV 577) を新たに書いて、夫々差し替えて上演されている。
この „Le nozze di Figaro” の改訂版による上演は大きな成功を収めて、その後合計で 26 回の公演が同劇場に於いて行われている。
また Adriana Ferrarese は、その翌年の 1 月 26 日に同劇場で行われた、同じく Mozart による 2 幕の Dramma giocoso „Così fan tutte, ossia La scuola degli amanti” (女性達は皆こういう風にする、又は恋人達の学校) の初演では、Fiordiligi を歌ってこの作品を成功に導く一役を担っている。
この先は次回
»Antonio Salieri Teil 27«
[Archiv / Kommentar 2020 Nr. 7]
へ続く
上部の写真:
Adriana Ferrarese del Bene
London で印刷された肖像版画
ca. 1785