Kommentar 2023 Nr. 4
Ludwig van Beethoven
und
seine Zeit
Antonio Salieri
Teil 48
»Antonio Salieri Teil 47«
[Archiv / Kommentar 2023 Nr. 3]
より続く
Wolfgang Amadeus Mozart や
Ludwig van Beethoven が
Wien で活動していた時代の
作曲家で
Wien の宮廷楽長
Antonio Salieri
について
1812 年に Wien 楽友協会が創設されるが、Antonio Salieri (1750-1825) はその際の共同創設者の 1 人として、その設立に協力している。
1812 年 11 月 29 日に Wien 王宮内の冬季乗馬学校を会場にして開催された、「善と有益を助成する貴夫人協会」 が主催する慈善演奏会が、この時の楽友協会創設の契機となった。この演奏会では Georg Friedrich Händel (1685-1759) による Cäcilienode „Das Alexanderfest” (HWV 75) が、„Timotheus oder Die Gewalt der Musik” (Timotheus 又は音楽の力) という名の下に、愛好家をその中心とする、合唱と Orchester を合わせて凡そ 600 人程の人々が演奏に参加し、聴衆は約 5,000 人という様な異例に大規模な演奏会であった。
この時に „Timotheus oder Die Gewalt der Musik” の名前の下に演奏されたのは、1736 年に初演の行われた Händel による „Das Alexanderfest” の原曲を、Wien の 宮廷図書館長であった Gottfried van Swieten 男爵 (1733-1803) の依嘱により、Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791) が 1789 年に管弦楽法上の編曲を行っており、この Mozart による編曲版はその後独語圏に於いて 19 世紀中に亘って一般的に良く演奏される版となっていたが、それを基にして更に Ignaz Franz von Mosel (1772-1844) によって、歌詞と音楽の双方に亘って編曲の行われたもので、この時の演奏会の指揮は Mosel 自身が行っている。
この巨大な演奏会は大変大きな成功を収め、それに伴って高揚する人々の希望するところから、同年 12 月 3 日にもう 1 度同じ演奏会が繰り返される事となり、それに加えてこの時の演奏を実際に担った様な、Wien の音楽愛好家の為の組織を創設しようという、人々の熱意も同時に高まる事となった。
そこでこの慈善演奏会を主催した善と有益を助成する貴夫人協会の秘書を務めており、又 1804 年から Wien の宮廷劇場秘書官でもあった Joseph Ferdinand Sonnleithner (1766-1835) が会の大綱を書き、賛同者の署名を集めるという活動を開始した。
翌年 Sonnleithner の書き上げた協会の定款が、承認を求めて宮廷に提出され、又この年も前年と同様に „Timotheus oder Die Gewalt der Musik” が、600 人を超える演奏者達によって 2 回演奏されている。
更にその翌 1814 年になって、皇帝 Franz I. (1768-1835) による楽友協会創設の許可が下され、実際の活動に着手される事となった。第 1 代の秘書は Sonnleithner が務め、名誉会長には Beethoven の数少ない生徒の 1 人で、Franz I. の末弟の Austria 大公 Rudolph (1788-1831) が就任した。
この協会は Wien に於いて定期的に演奏会を催す組織としては、1771 年にその翌年 Wien の Hofkapellmeister に就任する事になる、Florian Leopold Gaßmann (1729-1774) によって創設された 「Austria の音楽家の未亡人と孤児の為の年金協会」 に次ぐものとなったが、規約に於いてその主目的としては、「音楽のあらゆる分野に於ける向上」 が掲げられており、それを実現する為に具体的には、定期的な演奏会の主催に加えて、音楽教育機関の設置と、一般の図書館の範疇を超えた、過去と現在及び未来に於ける音楽と音楽活動の有様の全てを記録する様な、広範囲に亘る音楽蒐集の作成という、3つの課題が定められている。
定期的な演奏会の主催に関しては、1815 年 12 月 3 日に、会員を対象とした楽友協会の第 1 回定期演奏会が、王宮内の Redoutensaal 小 Hall に於いて行われている。
それ以前に既に臨時の祝祭的演奏会として、1814 年に Wien を会場にして行われていた、所謂 Wien 会議の為に集まった各国の参加者を対象にして、Händel による 3 幕の Oratorium „Samson” (HWV 57) が取り上げられているが、この時もこれに先立つ 2 年前と同様に、Ignaz Franz von Mosel が編曲を行った版が彼の指揮の下に演奏されている。
この先は次回
»Antonio Salieri Teil 49«
[Archiv / Kommentar 2023 Nr. 5]
へ続く
上部の写真:
„Timotheus oder Die Gewalt der Musik”
が演奏された演奏会
1812 年 11 月 29 日