Kommentar 2022 Nr. 5
Ludwig van Beethoven
und
seine Zeit
Antonio Salieri
Teil 41
»Antonio Salieri Teil 40«
[Archiv / Kommentar 2022 Nr. 4]
より続く
Wolfgang Amadeus Mozart や
Ludwig van Beethoven が
Wien で活動していた時代の
作曲家で
Wien の宮廷楽長
Antonio Salieri
について
Antonio Salieri (1750-1825) によって完成された最後の舞台作品となる 2 幕の Singspiel „Die Neger” (黒人) は、その大部分の作曲が 1802年に行われ、初演はそれから暫く時間が経過した 2 年後の、1804 年 11 月 10 日に Theater an der Wien に於いて行われている。
Wien に於けるこの Singspiel の上演は聴衆によって比較的冷静に受け止められ、4 回の公演の後に Theater an der Wien の演目から外されている。
一方その翌年に Preußen 王国の Breslau に於いて、当地の Kapellmeister であった Carl Maria von Weber (1786-1826) の指揮によって行われた公演は、成功裏に行われたという事が伝えられている。
同年 12 月 12 日付の „Allgemeine Musikalische Zeitung” 誌上に掲載された „Die Neger” の批評では、Salieri の音楽に関して部分的には優れた箇所が幾つもあるものの、全体としては Mozart や Cherbini [Luigi Cherubini (1760-1842)] の作品に於いて高く評価されて来た、力強さと性格描写に欠けると書かれている。
これに先立つ同月 7 日付の „Der Freimüthige” 誌上に於いても、「心地の良い音楽」 という言葉が見られるものの、同様の趣旨の批評が掲載されている。
但しその翌週にもう 1 度同誌上に現れた更なる „Die Neger” に関する記事では、Salieri の味わい深い音楽によるこの Oper が、5 回も大喝采を博したという事が伝えられている。
この作品の初演が行われた翌 1805 年 11 月 20 日に同じ Theater an der Wien に於いて、Ludwig van Beethoven (1770-1827) による 3 幕の Oper „Fidelio oder Die eheliche Liebe” („Fidelio” 第 1 稿、後に Beethoven の当初からの意思に従い „Leonore” と改称) の初演が行われている。
丁度 1 年の期間を隔てて初演が行われたこの Salieri と Beethoven による 2 つの舞台作品は、悪巧みを企む悪役の意図が明らかにされて、それ迄苦難にあった男性主役が救われる事になるという、夫々が共通した筋の根幹となる内容を持っているが、更に両方の作品の初演を担当した歌手を比較すると、両作品の主要な役の歌手達が重複している事が明らかとなる。
両方の作品に於いて夫々女性の主役となる Lady Anna と Leonore を、Salieri の下で声楽を学んだ Pauline Anna Milder (1785-1838) が歌い、最後に苦難から解放される事になる男性主役の、„Die Neger” に於ける Lord Falkland / Jack と „Fidelio” の Florestan は、1804 年初頭に Frankfurt am Main から Wien に移って Wien の宮廷劇場との契約を結んだ、Carl Demmer (1766-1824 以降) が受け持っている。
Demmer は生まれ故郷の Köln の劇場から、1789 年 1 月 3 日に新しく開場した Bonn の Nationaltheater に移っているので、丁度その時期に同劇場に於いて Viola 奏者を務めていた、Beethoven との面識が既にその頃からあったと推測する事が出来る。
更に両作品に於ける夫々唯 1 人悪役の Lord Bedford と Don Pizarro の役は、1793 年 9 月 9 日に Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791) による 2 幕の Singspiel „Die Zauberflöte” の Sarastro を歌って Wien-Début を果たし、その後 1797 年 12 月 23 日に Constanze Mozart (1762-1842) の姉で未亡人となっていた、Josepha Hofer (1758-1819、旧姓 Weber) と結婚した Sebastian Mayer (1773–1835) が歌い、女性脇役の Betty と Marzelline は、1798 年 7 月 10 日に Wien の Kärntnertortheater に於いて行われた、Mozart による 4 幕の Opera buffa „Le nozze di Figaro” (Figaro の結婚) の独語版の初演で、Barbarina を歌って歌手としての Début を行った Louise Müller (1784-1837) が、また男性脇役の John と Jaquino を、1802 年 1 月以来 Theater an der Wien の専属歌手であった Joseph Caché (1770-1841) が夫々担っている。
Allgemeine Musikalische Zeitung
及び
Der Freimüthige
による
記事の原文は省略
日本語訳及び [ ] 内の補注は執筆者による
この先は次回
»Antonio Salieri Teil 42«
[Archiv / Kommentar 2022 Nr. 6]
へ続く
上部の写真:
„Die Neger” の初演の際に印刷された
台本の表紙
1804